【文系でも読める】生物学、生命科学をテーマにした本を何冊か読んでみての所感【おすすめポイント紹介】

おすすめ本

「DNAとRNA」、「老化細胞」、「テロメア」、「iPS細胞」などなど話題になることも多いこの領域。
文系卒で生物学などさっぱりな私でしたが社会人になってから興味が湧き、数冊ですが本を読んでみました。
そこでの感想や、参考になったほんの一部を紹介してみようと思います。

「ちょっと興味あるけど理系の本は‥」
「生物がテーマの本って結構多いけど、どれがいいんだろう」
そんな方の参考になれば嬉しいです

「生物はなぜ死ぬのか」 小林武彦 著(2021年 講談社現代新書)

【ポイント】私たちが死ぬ理由を「進化と多様性」の観点から考察!「新たな死生観」の気づきがある一冊

☆読みやすさ:○(所々細かい記載があるが、知識なくても読める)
☆分量:○(新書で217ページ)
☆キーワード:ターンオーバー、進化と多様性
☆メッセージ:環境に対応すべく生物は進化し続けるものであり、そのために死んでいく

2022年の新書大賞第2位にも選出されている本です。
書名の通り、「生物が死ななくてはいけない意味」を生物学的観点から考察しています。

著者は「死に対する恐怖があるのは人間として当然のこと」と死への恐怖については肯定しています。
その上で「生物はみな必然的に死ななくてはいけない」と述べ、生物の誕生から現代に至るまでの歴史を振り返りつつ考察を進めていきます。

生物の絶滅と多様性というのは、真逆の現象のように感じられますが、長いスケールで見ると、深い繋がりがあるのです。

「生物はなぜ死ぬのか」小林武彦(講談社現代新書)p50 より引用

「生物が死ななくてはいけない理由とは、進化を加速させていくためである」というのがこの本から学べることだと個人的に思います。
誕生と絶滅を繰り返す(=ターンオーバー)ことで新しい種が生まれる。
その新しい種もいつかは絶滅して、また別の新種が生まれる。
私たち生物はこの流れを繰り返すことによって進化を加速させていると筆者は述べています。

人間の今の姿ってもう完全体というか、これ以上進化も何もないんじゃない?と思っていましたが、宇宙の時間軸でみるとほんの一瞬なんですよね。
そう考えると、もしかしたら未来の人間はまた違う形態で生活しているかも知れません(あるいは絶滅しているかも)
もちろん死への恐怖が消えることはないですが、「進化のために自分は死んでいく」と考えると、少し前向きな気持ちになれませんか?
すごく読みやすいですし、価値観の変化にも繋がる可能性ありですので、ぜひ読んでみてほしいです。

「LIFE SPAN 老いなき世界」 デビッド・A・シンクレア/マシュー・D・アクラント(2020年 東洋経済新聞社)

【ポイント】老化研究で有名な著者による不老不死への提言!データも多数で内容盛り沢山

☆読みやすさ:○(所々細かい記載があるが、知識なくても読める)
☆分量:△(分厚い 単行本で485P※謝辞や引用文献のぞく)
☆キーワード:老化を防ぐ、長寿遺伝子
☆メッセージ:老化の原因は複数あり、それに対するアプローチが進んでいる

       老いない身体を手に入れる未来が訪れるかもしれない。

この分野で有名な著者が最新の研究結果を元に老化についての理論を展開しています。
500P弱となかなかの分量で難しい箇所もありますが、全体として読みづらさはそこまでなかったです。

著者は老化の原因を絞り込んでいて、それに対するアプローチ(長寿遺伝子への働きかけ)を行うことで老いない身体を手に入れることができるのではないか?と提起しています。

心臓病にがん、痛みに虚弱、そして死が待つ世界へと私たち1人1人を追いやるのは、エピゲノム情報の喪失なのである。

「LIFE SPAN 老いなき世界」P131 デビッド・A・シンクレア/マシュー・D・アクラント(東洋経済新聞社)

私たちの体内に存在するたくさんの遺伝子の中から、適切なものを選択する役割を果たしているとされる「エピゲノム」が乱れることによって老化が引き起こされると著者は主張しています。

ではそれを防いだり、老化を遅らせるために今何が研究されているのか?
本書の後半部分でそれらについても言及されています。

薬物研究はもちろん、運動や断食といった生活習慣の改善などはいったいどれくらい老化の予防に寄与しているのかについても考察されていて、面白く読み進められました。
それぞれエビデンスも合わせて提示されているので、納得感もあると思います。

正直難しくてよくわからない‥という部分もあったのでそこは読み飛ばしたりしていました。
分量も多いので、自分の興味ある箇所をうまくピックアップしていくのが良いかもしれません。

「LIFE SCIENCE 長生きせざるをえない時代の生命科学講義」 吉森保 著(2020年 日経BP)

【ポイント】オートファジーについて知りたい方へ!エセ科学への対応方法も学習できる

☆読みやすさ:○(知識ない人向けに書かれていて読みやすい)
☆分量:◯(普通の分量:単行本で350P)
☆キーワード:細胞、オートファジー
☆メッセージ:生命の基本である細胞(特にオートファジー)について知る

       エセ科学に騙されないための「科学的思考」を身につける

最新科学の解説だけでなく、「情報過多の時代において、本当に有益な情報を自ら選べるだけの科学的思考力が必要である」というメッセージを感じる本でした。

基礎の基礎から生命科学の用語についての解説もあり、理系音痴の私も理解できました。
(遺伝子、DNA、ゲノムの違いやウイルスと抗体の関係などよく聞くところ)

そして本書の中心でもある「オートファジー」についても、出版時点で判明している情報が詳しく記載されています。
・オートファジーとはそもそも何なのか
・どのようにしてアンチエイジングに貢献できるのか
・オートファジーの活性を邪魔し、老化を進めているものは存在するのか
などなど、面白い情報がたくさんありました。

コロナ禍で鮮明になった科学的思考の必要性にも触れています。
一部の情報だけで判断してしまったり、因果と相関を勘違いしていたり、いわゆる「エセ科学」に惑わされないための思考術なども紹介されていて参考になりますよ。

新型コロナウイルスは、色々な説が世の中に出回りましたが、すべて仮説です。(中略)
待ったなしの状況では、不完全な仮説でも使うという場合もあり得ます。(中略)
検証が不十分な仮説であるということはしっかり認識していないといけません。

「LIFE SCIENCE 長生きせざるをえない時代の生命科学講義」P39 吉森保 著(日経BP)

「若い読者に贈る 美しい生物学講義」更科功 著(2019年 ダイヤモンド社)

【ポイント】例え話が出てきてわかりやすい!生物とは何か?深く考えたい方へ

☆読みやすさ:○(知識ない人向けに書かれていて読みやすい)
☆分量:◯(普通の分量:単行本で320P)
☆キーワード:生物と無生物、動物と植物、人類
☆メッセージ:生物学の美しさに触れて、興味を持ち、人生を豊かにする要素の1つに

不老不死や進化、遺伝など最近のトピックスも網羅しつつ、「生物と無生物の境はどこか」、「植物が果たす重要な役割」など他の本にはない視点を提供してくれる点が特徴だと感じました。

また例え話がいくつか本文中に出てくる点もポイントだと思います。
例えばそれを元に自然選択が働く仕組みや、ロボットが無生物であると定義できる根拠を考えたりするようなパートもあり、記憶に残るような説明だったのが印象的です。

個人的な見解になりますが、「最新知識をガンガン入れる!」といった類ではなく、「生物(中心は私たち人間)そのもの」についてじっくり考えるような本なのではないかと思います。

動物(というかすべての生物)は、元はといえば約四十億年前に生まれた生物の子孫である。(中略)あの生物はより高等で、この生物はより下等だ、なんてこともないのである。

「若い読者に贈る 美しい生物学講義」p169 更科功 (2019年 ダイヤモンド社)

まとめ:文系でも楽しく読める本はある!これからも要アップデートな分野

数冊ですが、私が読んでみた生物学、生命科学をテーマにした本を紹介してきました。

特に老化研究などはまさに日進月歩の分野であり、新しい知識もこれからどんどん出てくるものと思います。
これからもこの分野の本は手に取ってみて、自分自身の知識もアップデートしていきたいですね!

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